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ヒロイン三国ファンタジー
第24章 24 魏の末路
 慎ましい母、王元姫は父を亡くしたのち悲しみを振り払うように懸命に家の中を磨き、整え、忙しく過ごしていた。

「母上、少しお休みなってはいかがですか? そのような下仕事などなさって」
「いいのよ。身体を動かしている方が気持ちも楽になりますから」

 甲斐甲斐しく布切れで柱を拭いている王元姫は豊かな乳房を揺らし、玉の汗をかきながら頬を紅潮させている。司馬炎はその母の様子に、昔覗き見た両親の情事を思い出す。
この清楚で慎ましい母が、父と抱き合っていた淫靡な彼女と、とても同一人物に思えず、司馬炎はついつい凝視してしまう。

「どうしたの?」

「え、あ、あの今から朝廷に参内して参ります」
「ええ。いってらっしゃい」

 司馬炎は慌てて屋敷を後にし、第五代皇帝曹奐の元へ向かった。


 曹奐は司馬炎よりも6歳年下で彼が帝位についたとき、まだ14歳であどけなさを残し、不安でたまらぬと言う表情も見せていた。
当時、20歳であった司馬炎は三歳で死んでしまった弟、司馬定国によく似た丸く赤い頬に親しみを覚え、秘かに弟のように大事に仕えようと思った。その気持ちが曹奐にも感じられたのか、何かあればすぐに「炎、炎を呼んで参れ」と呼びだした。

 即位して5年経ち20歳前の曹奐は背丈も伸び青年らしくなったが、やはりあどけなさを残している。

「陛下。万歳、万々歳!」

 ひれ伏し拝礼する司馬炎に、曹奐は急ぎ、側により頭を上げさせる。

「炎よ。堅苦しいな」
「な、なりません、陛下。そのように臣下に触れては」

「ふうっ。よいではないか。朕とそなたの間柄で」

 司馬炎は声を押さえて周囲を伺い、お目付け役の賈充がいないことを確かめて「庭にでも参りましょう」と曹奐を誘った。
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