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ヒロイン三国ファンタジー
第25章 25 蜀の落日
 黄皓が蜀の実権を掌握したのち、姜維がまた北伐を進め魏に攻め込むが、鄧艾に撃退されされてしまう。そこで黄皓は軍権を取り上げようとする。
姜維は強い抵抗を見せ、劉禅に直訴する。

「陛下。このままではもう蜀は魏に攻め込まれてしまいます。国をあげて魏に抵抗せねば、蜀は、民は、どうなってしまうか」
「姜維よ。それは真か? 黄皓はそのようなことはなく、このまま穏やかに国が存在すると言っておったぞ」

「! そのような戯言を信じめさるのか! 陛下、どうか目を覚ましてください! 黄皓はただの佞臣で私腹を肥やしておるばかりなのです」
「うーん。黄皓は私財をなげうって朕が不自由ないように仕えてくれておる。寧ろそなたが無理な北伐で国財を減らしておると聞いているが」

「くっ! 陛下は、先帝や丞相の教えをお忘れなのですか!」

 姜維の熱弁にたじたじになっているところへ余裕を見せる黄皓が現れる。

「姜維よ。皇帝陛下に対して何という暴言を吐かれるのか。蜀漢が起こって40年、諸葛殿がなくなって27年。この間に魏では何人皇帝が変わり政変が起きているか。この治世は陛下の賜物なのですぞ!」

 黄皓の心地よい言葉を聞きながら、劉禅は自尊心が満たされる。姜維がなにやら懸命に訴えていたが、もう劉禅の耳には入っておらず、後で黄皓と飲む美酒の事を考えていた。

 相容れない黄皓に姜維は歯ぎしりし、退去する。黄皓はふんっと彼の長身で逞しく、麗しい後ろ姿に嫉妬し、心の中で『ざまあみろ』と叫んでいた。

 貧しい農村で生まれた黄皓は代々「天水の四姓」と呼ばれる豪族の姜氏である生まれと男らしいが麗しい容姿に憎しみを覚える。

 黄皓含む、兄弟たち皆貧しさに耐えられず、貧弱な体格により兵ではなく宦官を目指すが、男根を取り除いたのちに、皆、死に絶え、残ったのは黄皓のみであった。
生きること、食べることのために選んだ宦官の道は、男としての自尊心を打ち砕き、またそれがしぶとさにもなった。

 富める者たちの戦いにより、貧しきものはより貧しくなる。姜維の北伐はまさに財政を無駄に食いつぶすものとして特に憎しみの対象となっていく。

 今夜も貯め込んだ金銀、宝石、絹織物を眺め安心感を得る。

「これだけあれば、今何かあっても生き延びることが出来よう」

 家族もおらず彼にとって財産だけが安らぎであった。
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