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ヒロイン三国ファンタジー
第26章 26 呉の終焉
 部屋の前では見たことのある風貌の文官が控えている。

「そ、そなたは諸葛瑾……。いや……」

文官は立ち上がると思ったより背が高く巨漢で「瑾の息子、恪でございます。姫様」とにやりと笑む。

「ああ、恪であるか、しかし姫はよせ。立派になられて子瑜殿もご安心じゃな」

頭を垂れるつかみどころのないこの諸葛格に少し不安を覚えるが陸抗の「陛下に母が参ったと伝えて頂けますでしょうか、諸葛大将軍」との声に、ハッとし、諸葛恪から気を逸らした。

 諸葛格は静かに部屋に入り、またすぐに出て「参れとのことです」と伝えた後その場で座した。

 幕をくぐり、尚香から部屋に入ると孫権が頭に白い鉢巻を巻き付け、青白い顔を見せた。長身で豪華であった風貌は今ややつれ、骨格の良さが逆にがらんどうになった廃墟のようである。

「兄上!」
「尚香。よく戻ったな」

 駆け寄った尚香の手を握り、にこりと笑む孫権は久しぶりに嬉しそうだと陸抗は温かい気持ちになる。先ほど感じた己と同じ思いであろうと孫権を見る。
 陸抗にとって父を死に追いやった孫権は憎むべき相手ではあるが、なぜか憎み切れず仕えている。
陸遜もまた恨み言一つ言わず亡くなり、そのすぐあと尚香は剣を持ち出し庭先で振り回しさんざ暴れたが孫権への言及はなかった。
 陸遜の死後、孫権は陸抗に全面の信頼を寄せ、何かあるたびに陸遜のことを詫びた。
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