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ヒロイン三国ファンタジー
第26章 26 呉の終焉
「済まぬ」
「いえ……。どうぞ続きを」

「何度か帰る様に文は出しておったのだ。母上が寂しがってはいたのでな。しかし一向に返事がこぬ。探らせてみると文は全て諸葛亮の手に渡り、うち破られていたのだ」
「まさか……」

「いいや、本当の事だ。そなたを取り戻し、呂蒙を教育させてよく分かった。諸葛亮がそなたをとても怖れていたことを。諸葛瑾も言っておった。『尚香様を孔明は手放さぬでしょう』とな」
「はあ……。わたしが何をできたでしょうか。元徳様の妻であった時も政に、孫呉に関与することもありませんでしたし……」

「ああ、そうであろうな。しかしもしも、もしもだぞ? 劉備が倒れてそなたが妻であれば、おそらく諸葛亮はそなたを劉禅の補佐役とさせたであろうな」
「阿斗……」

「そうなれば呉にとっての脅威であっただろう」
「兄上、心配が過ぎます」

「いや。そなたがもしも野心があり、陸遜を焚きつけて政変をおこし、朕を倒せば、瞬く間に陸遜が皇帝であったろう」
「夫はそのような者ではありません」

「ああ、わかっている。だがそうなっても良かったのかもしれぬと思うこともある」
「もうよしましょう。もしもの話は。意味がありません」

「ん。済まぬ。この歳になってやっと己を振り返ることが出来るのだ。愚かであった己を……」

 再び涙を流し始めた孫権に、もはや過去の威光は見当たらず、尚香も悲しくなる。

「もう、お休みください。身体に障ります」
「いや。今日はとことん話したい。そなたの顔を見ると元気が湧いてきた。どうだ。今まで見てきたことを話して聞かせてはくれまいか。そなたほどこの三国を見聞きした者もなかなかおるまい」

「そうですね……」
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