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ヒロイン三国ファンタジー
第26章 26 呉の終焉
 康僧会の教えを熱心に聞き、李氏は頷きながら一言一言ぶつぶつと暗唱しているところである。そんな彼女に好感を持ち、やはり息子の嫁にふさわしいと思いながら邪魔をせず、法話が終わるのを待つ。
康僧会が手を合わせ頭を下げると、話を聞きに来ていた者たちは明るい顔でざわめきながら立ち去り、李氏も満足そうな表情をしてまた、掃除にとりかかろうとしていた。

「これ、お待ちなさい」
「あ、これは、尚香様」

「少し話がある。僧会殿、よいか?」

 康僧会は顔を綻ばせ「どうぞどうぞ」と部屋を去った。
李氏に緊張が走り、空気を張り詰めさせる。尚香の眼差しは誰であっても威圧し、動けなくする。

「そう、怯えなくともよい。息子のことで話がある」

 そう告げると李氏はひれ伏し「お許しください。わたくしのようなものが幼節様に親しくしていただき、尚香様にご不快な思いを」と謝り続けるばかりである。

ここまで低い態度をとるものは初めてであると、面白くもあったが尚香はこれではらちが明かぬと率直に告げることにする。

「いやいや。そなたを叱りに来たのではない。逆だ。息子に嫁いでくれまいか。勿論、息子はそなたを望んでおる」
「え……?」

 全く合点がいかぬようなので尚香は先を続ける。

「そなたの身分も何も気にはせぬ。嫌か? 何か問題があるのか? 息子はそなたを好いておるようだが」

「あ、あの、わたくしが、幼節様のもとに嫁ぐと?」
「そうだ」

「わ、わたくしは、身分も卑しく、とても幼節様にはふさわしくありません」
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