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ヒロイン三国ファンタジー
第26章 26 呉の終焉
 息子が良い妻を得たと安心し尚香は建初寺に参ると、庭先で康僧会がまばらな髪の痩せた男と話しているのが見えた。
尚香に気づき、その男は手を合わせ、頭を下げるので、尚香もまた、慌てて同様にする。

「ああ、尚香様。ようこそ、ちょうどよいところに、この方は朱士行殿とおっしゃってこの中華で初めて出家なされた方なのです」
「初めまして。お噂はかねがね。この国はとても明るくてよいところですね」

「これはこれは。ありがとうございます」

 康僧会は綺麗に髪も髭も剃っているが、朱士行は魏の洛陽からここまで旅してきたため、髪も伸び無精ひげも、服装も垢まみれで汚れている。それでも常人と違う目の輝きと鋭さは、尚香にさえも一目を置かせ、只者ではないと感じさせる。

「これからホータンに参り、経典を取ってこようと思っています」
「なんと! 敦煌よりも更に先ではありませんか」

「なんのなんの。仏の歩く道に比べわけはありません。そこへ参る前にこの建業で僧会殿にお会いしたかったのです」

 亡き武帝、曹操の儒教への弾圧のあと、仏教は朝廷への影響が良くも悪くもなく受容されていたが、結局のところ儒教から完全に離れることが出来ない人々によって、それほど浸透はしていない。
それに比べて、そもそも新しいものを受け入れやすい呉では、仏教も盛んに広まっている。

「経典にどうも不備があるようなのです。それをどうにかしないと人々に教えることが難しいでしょう」

 康僧会に比べ、朱士行はより禁欲的で探究者であるがため、少しの疑問も許せないらしい。康僧会も感心して毎日無事を祈ると約束していた。

 ちょうどその時孫晧がやって来、三人にきちんと礼をする。
その立派な様子に朱士行は「これはこれは立派なご子息ですな」と尚香に告げる。
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