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ヒロイン三国ファンタジー
第26章 26 呉の終焉
「いや、いや、彼は兄の孫である」
「はあはあ、そうでしたか。この方はきっと天意を為すことが出来るでしょう」

 これからの長旅に尚香は西涼まで見送ろうかと提案する。

「いえいえ、そんなお手を煩わせることなど」

 遠慮する朱士行に孫晧がついて行きたいと言い始めた。

「私も一緒に行ってもよいですか? 船を使えばもっと早いでしょう?」
「うーん。たしかに呉の船は上るも下るも容易であるが、他国に間諜と思われてはかなわぬ。馬であるな」

「ああ、確かに」

「あ、あの。尚香様。拙僧にそのような見送りなど……」
「いやいや、時間を掛ければよいわけでもありますまい。せめて蜀付近まで」

「おばあ様大丈夫なのですか? お身体の方は」
「ん? 元宗よ。わたしはそなたより随分、馬にも旅にも慣れておる。黄忠よろしく、老いてますますというものだ。そなたこそ新妻を置いて長旅か?」

 孫晧は孫休によって烏程侯に封じられており、宮廷を守る五官中郎将、滕牧の娘を娶っている。

「芳蘭は大人しい妻ですから、平気でしょう。旅の話を聞かせれば喜ぶはずです」

 勝手に話を進める二人を眺め、うーんと唸っている朱士行に康僧会は優しく「良いではありませんか」と肩に手をのせる。

「確かにこのお二人が、いれば旅は安心ですし、せっかくですから道中、仏の話でもなさるがよいでしょう」
「そうですな。これも仏のお導きでしょうか」

 こうして朱士行を馬車に乗せ、二人は北西の雍州を目指す旅に出た。
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