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ヒロイン三国ファンタジー
第26章 26 呉の終焉
 呉の治世が安定してくると孫休は家臣に政を任せ、己は学問と狩りに向かい朝廷を顧みることが無くなってしまう。
 そのため、また君主の力が失われ始め、丞相の濮陽興と左将軍の張布が権力を持ち始める。

 そんな中で蜀が魏に攻められているという知らせを受け援軍を送ろうとしたが、早々に劉禅が魏に降伏し、援軍は中止となる。

 三国鼎立の均衡が崩れ、更に、孫休は急死してしまう。息子であり、太子である孫ワンが皇位を受け継ぐところであったが、蜀滅亡と魏に対抗するには心もとない幼い皇帝では難しいと判断される。
孫ワンを傀儡として利用し、野心を果たそうとする奸臣もこの情勢では出てこなかった。
 そこで丞相の濮陽興と張布により、呉、最後の皇帝、孫晧が擁立する。


 冕冠(べんかん)をかぶる若き君主、孫晧を眺め、孫尚香はまるで兄の孫策が皇帝についたのか思った。麗しく華やかで堂々とした姿は26歳という若さで散ってしまった孫策によく似ている。

「ああ、兄上に見せたやりたかった。この孫晧の姿を……」

 孫策を信奉していた孫権が、この姿を見たらどんなに感動するだろうかと、尚香は久しぶりに潤む目元に手を当てた。
 臣下一同、孫晧への期待は厚く、やはり孫策を知るものは彼の生まれ変わりかもしれないとまで囁かれる。

 孫晧は期待通りに、良い政治を行う。仏教の教えも彼に影響しているらしく、まず、貧しいものへの救済が始まり、孤独な者へは官女を娶らせ、人々の心と身体の豊かさに尽力を注ぐ。
 この明君ぶりに、誰もが呉の行く末が輝くものと信じていた。
しかし彼を皇帝に推した濮陽興と張布を流罪にし、更には殺害する。これを機に彼は暴君として悪名を後世に残していくことになった。
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