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ヒロイン三国ファンタジー
第3章 3 徐州を巡って・1
「なあ玄徳、いつまでもここに居てよいのだぞ。お前なら大歓迎だ」
「伯珪。いつもありがとう。この恩は戦いにて返したい」
「うんうん、気にするな」

彼は玄徳の手を取り、ぽんぽんと軽く叩き甲を撫でる。
その様子にじっと強い視線を向けるものがいる。
玄徳は自分に熱い視線が送られているのを感じふっと公孫サンと反対側の左に視線をやる。

若々しくも頼もしい風情の若者が身動きせずに、瞬きもせずに自分を見入っていることに気づく。
彼は関羽の青龍偃月刀や張飛の蛇矛とは違い、左右対称で美しいまっすぐな槍を手にしている。槍の根元についた返り血除けの赤い槍纓のみが風に揺れている。

髭を生やしておらずこざっぱりとした容貌はむさくるしい男だらけの陣営で一陣の風のような爽やかさだ。
玄徳は初めて出会う透明感のある兵士に抗えない魅力を感じる。こちらの視線を受けても反らしたりせずまっすぐ見つめ合う形となった。

玄徳の視線の先に気づき公孫サンが「ああ」と声をあげ、笑顔でその彼を手招きする。
時間がゆっくりと流れるように彼はまっすぐ玄徳を見つめたままそばにやってくる。

「玄徳よ。彼は趙雲子龍というもので、わしを危機から救ってくれた剛の者だ」
「劉備様、お初にお目にかかります。どうかお見知りおきを」
「こちらこそ」

なんとか挨拶を交わすので玄徳と趙雲は精一杯であった。
しばらく公孫サンと陣営を見回り、玄徳は関羽と張飛の元へ戻った。

ぼんやり虚ろな玄徳に張飛が心配そうに声を掛ける。

「兄者、どうしたのだ。疲れているのか?」
「あ、ああ、いや。なんでもない。確かに疲れているのかもしれない」

「ここのところ戦続きでしたからな。少し気が安らいだのでしょう」
「今夜はもう休みましょう」
「冷えます夜故二人の間に挟まれるがよかろう」

寝食を共にする三人は一つの寝台で狭いながらも肩を寄せ合って眠った。
温かさといたわりを感じながらも玄徳は今日の趙雲の熱い瞳を思い出し、しばらく安眠が訪れなかった。
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