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ヒロイン三国ファンタジー
第4章 4 徐州を巡って・2
 徐州ではまるで長い冬が終わり春が来たかのような明るくにぎやかな宴が設けられる。極上の酒が振舞われ、新鮮な肉と野菜が並び美女たちが舞い歌うのであった。
玄徳は長い戦乱と放浪ともともとの慎ましい生活ぶりのため、このような宴席は初めてであった。

上機嫌で張飛は遠慮なく酒を飲み気分を良くしている。関羽もいつものしかめっ面から相好を崩し髭を撫でながら舞を愉しんでいる。

「兄者、このようなもてなしを受けるのは初めてでございますなあ」
「うむ。このようなもてなしを望んでいたわけではないがなんと素晴らしいものであるな」

玄徳は初めての極楽のようなもてなしに夢を見ているような気がしていたが、本来慎ましい質故、溺れることもなく静かに酒を飲み舞を楽しんでいた。そんな崩れない清らかな玄徳を目の当たりにし、陶謙はますます心酔していくのであった。


「ああ、よく飲んだ。小便小便」

張飛は屋敷を出て厠に行かず外に小便をしに出た。酔って火照った体に夜風が心地よい。案外気の小さい張飛は周りに人がいないことを確かめ、堀に勢いよく放尿するとすっきりした面持ちでまた屋敷の方へ戻ろうとした。

大きな木の陰に何かが揺らめきおもわず「なんだあ?」と声をあげると「これは、張飛殿」と声を掛けるものがあった。

「んんー? 趙雲じゃないか? 何をしてるんだこんなところで。一緒に中で呑もうや」

今日の趙雲の活躍を張飛は思い出し、すっかりご機嫌で肩を叩く。

無口な趙雲に張飛はすっかりなじんだ旧友のように「今日の先鋒を切った時の名乗りはとても良かったなっ!」と親し気に褒め称える。

「ありがとうございます」

「んんんー? なんだよっ、しけた面しやがって。おめえが一番の功労者なのにどうしたっていうんだ。兄者だっておめえのことすごく気に入ってるしなあ」
「え? 玄徳殿が、わたしを?」

「んん? 俺も関羽兄貴だってお前なら俺たちと兄弟になれるだろうって話をしてたところだ」
「あなたたちの兄弟に……。なんとありがたい」

勝利の宴の中で一番の功労者である趙雲のしんみりした様子に、元来お節介な張飛は放っておけなくなり沈んでいる理由を聞き出そうとした。
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