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ヒロイン三国ファンタジー
第1章 1 桃園の誓い
「さあ、こちらへ」
少し奥まった場所に通され、張飛は大きな声で「関羽の兄貴! 良い御仁を連れてきましたぜ」と叫ぶ。
「さあさ、玄徳殿」
促され入った部屋には張飛よりもさらに大柄で鋭い目に艶やかな長いひげを蓄えた男が座っている。

「劉備玄徳です」
「わしは関羽雲長と申す」
するりと髭を撫でじいっと見つめてくる関羽の瞳はまるで深い海のようである。
「まずはいい出会いに乾杯しましょう!」

張飛は酒が飲みたいのか乾杯がしたいのかわからぬ風情で盃になみなみと酒を注ぎ、二人に促す。
玄徳は女であるが男として生きてきたので酒にたしなみもあり、良い飲みっぷりを見せるが品位を崩さなかった。

関羽は張飛が気に入った男とは珍しいと玄徳を良く見つめたがなぜか目を見ていると居心地の悪さと同時に心地よさを感じ、酒に酔ってしまったのかと張飛に茶を所望する。

「おかしいなあ。これは上等な酒ですぜ。いつもはざるなのに」
「うーむ。わしにもわからんがなんだか不思議な心持なのだ」
「まあ、俺もそうなんですけどねえ。玄徳殿は平気ですか?」
「ええ。私はあなたたちに会えてとても嬉しく思っています。ただ……」
「ただ?」
「これだけもてなしていただいて、天下への志を聞かせていただいたというのに、私には志しかない……」
「どういうことですかな」
玄徳はまず自分が漢王朝の末裔であることをのべた。その話だけで関羽と張飛は十分にこの玄徳に対する敬愛の念を納得する。

押し黙る玄徳に張飛はしびれを切らす。
「ええぃ! 玄徳殿、はっきり言ってください! 俺たちがふがいないとか? こんなに心を砕いて話し合っているというのに!」
張飛の真剣な眼差しに玄徳は決心をし、酒を飲み干し一言発する。

「私は女なのです」

目を見張る二人に挟まれ時間が止まったようだった。
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