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ヒロイン三国ファンタジー
第10章 10 江東の女傑
 夫人たちとも義兄弟たちとも違う、獣のような野性的な尚香はそういえばどこか亡き孫堅文台に似ている。

「あなたは父上によく似ておられるな」
「ええ。兄弟の中であたしが一番似ていると思います。怯えてらっしゃるようなので少しお話ししましょう。性急でしたわね」

 自分の娘のような年頃の尚香に翻弄され玄徳はうろたえる。

「女人が男を嫌うというのは、こういうことがお嫌いなのかと思っていましたが」
「ああ、誤解をさせていますのね。うふふ。男が嫌いというよりも男に情欲が沸きませんの。趣向の問題ですわ」

「そうですか」
「もっと幼い頃、一度、公瑾に迫ってみましたの。彼なら男でも平気かと思いまして。今でこそ立派な武人ですが若い頃は女人のような美しさと優美さでしたから」

「さすがは美周郎と名高いだけありますね」
「うふふっ。迫ったら彼なんておっしゃったと思う? 『弟君、お戯れはよしなさい。わたしには男色ありません』ですって。孫権兄さまと間違えたのよ? 頭に来たからずっとあの時のあたしを孫権兄さまということにしてあるの」

「なんと、お人が悪い」
「うふふっ、そのせいかしらね。ちょっとあの二人には交わりにくいところがあって魯粛がおろおろしているわね」

「……」

 玄徳は尚香の話を聞きながら彼女の性的な趣向よりも、宮廷内の内情に精通し、的確に人間関係を把握していることに驚いた。
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