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ヒロイン三国ファンタジー
第12章 12 大いなる犠牲
 入れ替わりにホウ統士元がやってきた。
今の世では『伏龍』、『鳳雛』どちらかの人材を得れば天下を取ったも同然と言われる。
彼はその『鳳雛』である。『伏龍』の諸葛亮と並び合う名軍師なのだ。

 容貌が小太りの小男で、顔にあばたもあるため彼が優れた人材だと思われにくく、なかなか良い主君に巡り合えなかった。
最初、玄徳も人材を求めるための試験に唯一合格したホウ統を前にした時、彼の埃にまみれた衣服と、顔をあげても袖で隠し目を見せぬ様子に信用が置けず、高い位を与えることが出来なかった。
試験の際に偽名を使っていたのでなおさらであったが、諸葛亮によってやっと彼が『鳳雛』であるとわかり、重用されることになった。

「我が君、ワシが足をお洗いします」
「おお、軍師どの。忙しいのに」

「いえいえ。喜んでいただけるのであればなんでもいたします」
「ありがとう。士元に洗ってもらうと私はとても良い心地になってしまうから、ついつい甘えてしまうな」

「え、いえ、そ、そんな」

 ホウ統はあばたの顔を赤らめ、ちらりと玄徳の白い足を見る。
玄徳が外見で人を判断しないことは今ではよくわかっていた。彼のあばたの顔を嫌がる素振りも、避ける素振りもない。
 初めて会ったときに衣服が汚れすぎていたことと、目を合わせなかったことが不信に繋がっていたようだ。
 今では身なりを清潔に整え、きちんと洗髪もしまっすぐ顔をあげて向き合うことにしている。

「どうぞ、この温かい布を目の上に乗せて身体を倒してくだされ」
「ん、あい、わかった」
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