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あなたの背中
第2章 2年前の6月
「 調子はどうですか、お嬢さん。」
「 わっ……!」
突然物音一つ立てずに店長が休憩室からやってきて、私の肩をポンと叩いた。
「 んもー…本当驚かさないでくださいよ… 」
「 ん?いつもの事でしょ?」
「 いつもだから怒ってるんです!」
プクッと頰を膨らませ眉間にシワを寄せながら店長の方へと顔を向けると、店長は目を丸くしてからニコリと笑った。
「 何、ハルちゃん照れてるの?」
「 はい?なんでそうなるんですか!」
「 だってほら。顔、りんごちゃん。」
そういうと店長は大きな両手のひらを私の頬に当てて、私の顔をグイッと鏡の方に向けさせた。
鏡には、店長の掌に押しつぶされヒヨコのような顔になった自分が映っていた。
「 てんちょーはアクマですか 」
頬が潰され喋りにくいままに言葉を発する。
店長の手の冷たさが頬に染み渡る。
「 ぷっ…… 」
「 いいかげんぅ…離してください 」
笑いを堪える店長を横目に見ると店長と視線が合った。店長の瞳は少しブルーが入っていてとても綺麗だ。黙っていれば本当にいい男なのにと、またもや心の中で思ってしまう。喋っていると悪い男という訳では決してないけれど。
「 あぁ。ごめんごめん。で、どうしたの?」
店長はクスクスと肩を揺らしながら視線が合うと同時に、頰から冷たい掌を離した。