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あなたの背中
第3章 人との距離感
エンジンをかけ、私と店長を乗せた車は走り出した。
車の中はイージーリスニングのようなジャズのような音楽が流れている。
「 店長はハンバーグ、好きなんですか?」
「 どうして?」
「 美味しいところを知ってるくらいなので…好きなのかな…と 」
「 嫌いではないよ、かといって好きでもないかな 」
「 えっ…!じゃ、じゃあ違うところにしますか?」
「 どうして?」
また始まった… と思ってしまった。
店長はいつもこうだ、何故、どうしてからはじまり最終的に私に質問攻めになる。
「 店長の食べたいところでお食事しましょうよ 」
「 んー。わかった、いいよ 」
「 …あれ、今日は素直なんですね 」
いつもより早く話に終わりが来た。いつもなら更に、どうして?と続くのに。
「 んー。そのかわりと言っちゃなんだけどね 」
「 …はい?なんでしょう?」
「 今日は"店長"じゃなくて "知哉" (トモヤ) って呼んでよ 」
「 ……はい?」
「 今日はドライブデートでしょ 」
「 ……はい 」
ドキドキと心臓の鼓動が早くなる。
聞き返さずとも、店長…いや、知哉さんの言いたいことは分かった。ドライブデートをしているのだから、下の名前で呼べ、と。
「 ね、ハルちゃん、わかった?」
「 んん……わかりましたよ…… 」
渋々と同意しチラリと店長を見ると、前を向いたまま和かな笑みをこぼしていた。