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あなたの背中
第3章 人との距離感
ピロリロン♪
車を走らせている途中で店長の携帯が鳴った。電話のようでずっと鳴り続けている。
「 てんちょ……知哉…さん、電話… 」
「 あぁ。構わないよ。ほっといて 」
「 いいんですか?電話みたいですけど… 」
「 いいの。運転中だし僕の休日なんだから。」
前を向いたまま少し眉間にシワを寄せ店長はそう言った。
「 ほら、着いたよ。」
そんなやりとりをしていると、店長はある一軒のお洒落なお店の駐車場に車を止めた。道路側の壁はガラス張りで道路との間には沢山の植物が植わっており、中は小洒落たカフェのようでとても綺麗だった。
「 凄い…… お洒落なところですね!」
「 ここの看板メニューはハンバーグなんだ。見た目とのギャップがまたいいよね。」
「 あれ…?店長が行きたいところって…… 」
「 ん?ここだけど…?」
なんだぁ、と胸をホッと撫で下ろした。
店長の行きたい所に、とお願いしたので前話していたハンバーグ屋さんとは違う所へいくとばかり勘違いしていた。
車を降りると、店長が先導し店へと入る。
店へ入ると二階との吹き抜けになっておりとても開放感のある場所だった。
店員さんに『お待ちしておりました』と声を掛けられ、店の奥へと案内される。奥には個室が何席があるようで、一番奥の部屋に通された。
「 わっ…… 」
通された部屋は隠れ家のような個室で、木の温もりを感じると共にワインのボトルなどがオシャレに飾られておりとても素敵な空間だった。
「 ここ、バルみたいでしょ。僕この雰囲気が凄く好きなんだよね 」
向かい合って椅子に座った私を、嬉しそうな表情で見つめる店長。
「 予約までしてくれてたんですね…っ 」
嬉しさと同時に申し訳なさも溢れ出る。
私なんかの為に、と。
「 コースが頼みたくてね、どうしても 」
「 あ、そうなんですね……… ハンバーグ?」
「 ははっ。もちろんじゃないか、何を疑ってるの。」
店長が珍しく声を出して笑った。そしていつもより明るい店長で、見ている私までなんだかワクワクした気持ちになっていた。