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第3章 人との距離感

「 ハルちゃん、いい顔するね 」

クスッと小さく笑った店長がそう呟いた。

「 食べていいですか？！」

「 もちろん、ハルちゃんのためのデザートだからね 」

「 やったー！いただきますっ 」


いちごのカットから口に運ぶ。さっきまでハンバーグで満たされていた口の中が一気に鮮やかになる。


「 ……おいひぃ 」

「 ふっ、本当いい食べっぷりだ 」


店長は余っていたフォークを手に取るとガトーショコラを一口大に切りフォークの上に乗せると私の口の前へと差し出した。


「 ほら、口開けて 」

「 へっ…… 」

まさかの行動に驚きを隠せず思わず顔を引くと、店長はさらに腕を伸ばしガトーショコラの乗ったフォークを差し出してきた。

「 食べないの？ほら 」

「 んん………っ 」

自分の顔に熱が上がるのが自分でもわかった。
恥ずかしい気持ちを我慢して、パクッと一口で食べフォークから口を離した。

「 ははっ、いい子だ 」

「 もう……からかい過ぎです…… 」

目線を泳がせながらチラリと一瞬見えた店長の顔は本当に満足気な顔をしている。

「 知哉さん、はい 」

やられっぱなしでは嫌だった私はカットされたイチゴを店長の口元まで運ぶ。

「 なに、食べさせてくれるの？」

「 仕返しです……。」

「 可愛らしい仕返しだな。いただきます 」

恥ずかしがる様子もなく、店長はパクリとイチゴを口にしフォークから口を離す。

こんな事をしていると、なんだかカップルみたいに思えてきてしまい、ドキドキと高鳴る感情の反対で申し訳ない気持ちも溢れていた。店長の休日に電話をかけてくるような相手は、きっと女の人だろうな、なんて事も考えてしまっていた。