この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
あなたの背中
第3章 人との距離感
あっという間に時間は過ぎ、時刻は20時を過ぎていた。食事も済み、少しゆっくりしている時だった。
「 そろそろ帰ろうか 」
「 そうですね、ごちそうさまでした 」
この楽しい時間が終わってしまうのか、なんて考えると少し寂しい気持ちになったので、顔に出ないようにと営業スマイルを店長に向けた。
ポンッ……
「 えっ…… 」
驚いて思わず目が点になる。唐突に店長が私の頭を撫でた。
その顔はなんだか少し寂しそうだったけれど、彼は笑っていた。
「 さ、いこう 」
ギュッ ……
そう言うと、私の右手をギュッと握った。握ったまま出口へと向かい、店員さんに"ごちそうさま"と笑顔を向けると車の助手席まで私をエスコートして行く。
「 どっ、どうしたんですか?急に… 」
「 今日はデートでしょ?はい、どうぞ 」
助手席のドアをあけ、私が座ったのを確認すると優しくドアを閉める。本当に、まるで、紳士的な彼氏のように。
「 よかったでしょ?ここ 」
車を走らせながら私に聞く。もちろん悪いわけなんてない。料理も雰囲気も私は大満足だった。
「 すごく気に入りました!でも…ありがとうございます 」
「 ん? でもって…なに?」
「 いや…だって、私ただの従業員ですよ?」
「 ただの、じゃなくて"大切な" ね。」
「 … それってどういう…… 」
店長は、よく曖昧に応える。だからわからなくなる。
今日の出来事なんて、まるで恋人同士みたいで……