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オカシ屋サン
第6章 苺大福①

パーソナルスペースとはいつでもキスができる恋人同士の距離だ。

そこへ無理やり引き込まれた彼女。その口から不平が飛び出す前に頬に赤みがさしたのを、僕は見逃さない。

「な、なんなの……?」

「……フフ」

抵抗が遅れたのをいい事に、調子にのった逆の手を首元に添える。

浴衣の衿からのぞく項(ウナジ)を指の腹でなぞった。


「男の心無い言葉に傷付けられた……
 不憫で虚弱な匂いがします」

「…ッ…」

「その傷……僕が癒やして差し上げたい」


視線を絡めた後──顔を近付ける。

キスはしません。

首筋に触れそうなところまで鼻を寄せて、スンと匂いを吸い込んだ。


「ひゃっ…//」

「僕に依頼してみませんか?」

「…!」

「仕事を与えてください。そうすれば、どんな悩みも願望も貴女の思いのままになる」

「……!?…離して!…き、気持ち悪い…っ」


彼女の体温が跳ね上がる。

ようやく僕を突き放した両腕だが、その力はあまりに弱い。

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