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オカシ屋サン
第6章 苺大福①
「ナンパじゃなくて宗教の勧誘っ?人を呼びますよ!」
「人を呼ぶ?……フ、こんな山道で助けが来ると?」
「離して…っ」
僕の手を振りほどこうと苦戦する彼女は、すでに冷静さを失っている。
先ほどまで橋の上から物憂げに景色を見ていた横顔は、今やそれどころで無い様子だ。
「クク……後悔していますか?」
「…っ」
「こんな事になるなら、部屋で寝ている彼氏を放置してひとり散策に出なければよかったと……ね」
「……!? どうして彼の事まで知ってるの!?」
「昨晩、夕食会場で貴女たち二人をお見かけしました。男性のほうはすでにかなりの日本酒をたしなんでいたようで……最後のデザートを味わえないほど酔っ払っていたようですが」
「旅館でわたし達を見てたってコト…!?」
「そのとおりです」
「…!!」
命の危機すら感じた顔。
ここで僕と会ったのが偶然でなく後をつけられていたのだと知ったのだから無理はない。
ひどく狼狽する彼女はガタガタ震えて
顎を引いて身を縮め
そして──
「──…そう、なのね」
「……」
「貴方にはぜんぶ……筒抜けなのね」
か細い声で呟くと、抵抗を諦めた。