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オカシ屋サン
第7章 苺大福②
嘲笑の度合いは幅広い。
学校のクラスメイト全員からのいじめであれ
……大切な恋人からの、ほんの些細なひと言であれ
植え付けられる劣等感は同じくらい大きく──深かったりする。
「失礼。中に入ってもよろしいですか」
旅館に戻った僕は、用意したお菓子を持って彼女の部屋を訪ねていた。
「入りますよ?」
「ど、どうぞ」
中からの合図を待って引き戸を開ける。
小上がりの前で靴を脱ぎ、部屋に上がった僕はその先の襖(フスマ)を開けた。
畳貼りの客室。
中央に座卓があり、そこに彼女が座っていた。
部屋にいるのはひとりだけだ。
「……おや、おひとりですか」
「彼は……その、朝食の後、お風呂にはいり直してくると言って出ていきました」
「わざわざ出掛けられたのですか?たしかこの客室は貸切の露天風呂付きだったような」
「そうですけどっ……出ていきましたから」
床の間の掛け軸を背景に、彼女は寂しい笑顔で言い捨てる。