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オカシ屋サン
第7章 苺大福②
「では最後にお代を頂けますか?3000円になります」
「─!? 高くないですか」
「何を仰る。格安ですよ」
「えーでもたしか98%OFFセールだって…」
「ですから割引価格で、3000円です」
「何よそれ…っ、詐欺じゃない?」
おやおや
この良心的な値段に対して幸野さんは不満があるようだ。
「詐欺ではありません。値段が不服ならもちろん断るのもテです(値切り交渉は受け付けませんが)。……が、すでにこうしてお菓子を作っておりますから、できる事なら貴女に召し上がって頂きたい」
話す僕の手は机に置いた重箱を彼女のほうへ つい と押す。
何かいいかけて口を開けた幸野さんの目の前で、その蓋を取った。
パカ...
「……?」
「これが貴女のお菓子です、幸野さん。
──…《苺大福》で御座います」
蓋を開けるその静かな動作──。
文句をこらえた幸野さん。
そして中身を見た彼女が
無意識に呑んだ息の奥の、その臓腑(ゾウフ)に向けてこそ僕の切先は狙いを定めた。