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オカシ屋サン
第7章 苺大福②
ちょうどその時、玄関の扉が開けられた。
「あれ?あいついねーの?」
正確には、扉が開いた音がした。
玄関とこの和室は一枚の襖(フスマ)で仕切られているから直接見えない。
向こう側から男のひとり言が聞こえる。
「彼だわ、戻ってきた……」
それを聞いて幸野さんが顔を曇らせた。
この状況を"彼"に見られるリスク──よくわかっていますよ。
「こんなに早く戻るなんて…──ッッ
て、なに……!?」
「シッ、静かに」
僕は隣の彼女を下から抱き上げる。
咄嗟に暴れ出す前にその身体を部屋の奥へ運んだ。
畳が敷かれたこの和室から、椅子が置かれた板の間を通り過ぎてさらに奥。
背後では再びガラガラと音が鳴り、ここに入ってきた男が玄関の扉を閉めたのがわかった。
下駄を脱ぎ、まさに和室の襖が開けられようとしている──
その直前に僕は板の間の窓を横に引き、そこから外へと飛び出した。
身投げではないのでご安心を。
「なっ何してるの!?」
「黙ってください」
そこは露天の貸切風呂。
陶器でできた赤銅色の丸い湯舟に、竹筒から注がれる白色の温泉が溢れていた。