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オカシ屋サン
第7章 苺大福②

暴れていた手足が静かになる。

「……」

わめいていた声も収まり、俯きかげんに彼女は脱力した。

僕はそっと口を解放した。


「……、笑えばいいじゃない」

「……」

「あなたの言う通りよ。彼と上手くいってないの。昨夜も上手くできなくて、気不味くて、朝はひとりで散歩してたの。悪いのはわたし。わたしが原因なのよ。──でも」

乱れた浴衣の裾を直しながら話す彼女の、頬を涙が流れていく。

湯舟から溢れた湯が彼女の背中を濡らして


「でもッ……なにも初めから濡れなかったわけじゃないわ……!!」


チャポンと音がして、僕の頬にもそれが散った。


「もういいから……帰って。お菓子もいらないから今すぐ帰ってください」

帰るもなにも、今ここを出て部屋の中に戻ろうものなら彼氏と鉢合わせは免れない。

そんな事にも気が回らないのだろう。

動揺する彼女は裏返る声をどうにかしようとして、ゆっくり息を吐き出していた。


白く吐き出された息が風呂から立ち昇る湯気と合わさる。


「帰りませんよ。まだ」

「嫌よ……空気よんでさっさと消えてよバカ」

「こっちこそ嫌です帰りません。僕はお金を頂きました──…つまり依頼は完了した。

だから今度は、"ターゲットである幸野さん"、貴女を犯す仕事が待っています」

「‥ッ…‥ん…‥!?」


僕は、濡れた頬を両側からはさみこんで

そして唇を奪った。

今こそなんの遠慮もない。女では逃げられない男の強い力で押し倒し、強引に深く舌を穿った。


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