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オカシ屋サン
第4章 バスク風チーズケイク①
その女は──当時俺が担当していた地区の、マンションに住んでる人妻だった。たぶん歳は30代後半。
週に1回はそこに荷物を届けてた。俺達はすぐにお互いを覚えて、荷物を渡しながら「今日のお仕事は順調ですか〜」とか「いい匂いがしますね。夕食のメニューは何ですか〜」とか、…まぁそんな何気ない会話をする仲になってた。
清楚で…女神みたいに優しい人で
加えて人妻特有の色気っていうか、大人の余裕みたいなのがたまらなく魅力的だった。
まだ晩夏で暑い日もあったから、俺を気遣って冷たい缶コーヒーくれたり、冷やしたタオルを首に巻いてくれたりとかして……。俺にそんな事してくれる女なんて今までいなかったから、惚れるのはあっと言う間だった。歳の差は気にならなかった。
けど相手は人妻だ。
俺にチャンスなんかない。付き合いたいとか自分の女にしたいとか…そんな考えはまるでなかったんだ。
なのに
『 今日はこれでお仕事終わりなの…? 』
『 はい!今日のぶんは全部配り終えたっす 』
『 そう……なら、少しお茶していかない? 』
『 え?でもお邪魔じゃあっ…?もう夜遅いし 』
『 いいのよ、主人は帰って来ないから…。一昨日ねチーズケーキを焼いたの。ちょうど食べ頃だから、ね?私と一緒に… 』
『 ……! 』
ある日、俺は家に招かれた。
夜の10時をまわっていたから、どう考えても人様の家に上がっていい時間じゃない。
しかも旦那は不在。家には子供もいなかったから人妻とふたりっきり。