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オカシ屋サン
第4章 バスク風チーズケイク①
「"復讐"だの"仕返し"だの……
格好を付けているのはそちら側では?」
「‥‥!?」
カウンターの向こうから素早く伸びてきた手が俺の胸ぐらを掴んだ。
引き寄せられて──持ち上げられる。
「‥ぅ゛‥ッッ」
第一ボタンまで閉じている制服の襟(エリ)が、顎の下に食い込む。苦しい。だが首が絞まったままだから咳き込むことすらできない。
俺は歯を食い縛り、ぎりぎりつま先が床に付いている両足に力を入れた。
で、胸ぐらを掴んでる手を引き剥がそうとするんだけど……ビクともしねぇ!
こいつすごい力だ。
「貴方の中に復讐心など欠片もない」
「ぅ‥‥グ‥ッ‥!?」
「貴方はその奥さんと肉体関係を結び、彼女の全てを理解し支配した気でいた──。……フフ、ところが彼女にはまだ貴方の知らない秘密があり、そこへ立ち入る事を拒絶された」
「‥‥!」
「だから悔しいのでしょう?」
俺を持ち上げている腕力とはどう考えても釣り合わない涼しい顔を…
鼻と鼻が付きそうな距離まで寄せられる。
男なんかに顔を近付けられても気持ち悪いだけなのに、何故か今の俺は……そいつの色気に圧倒されて、ツバを呑んじまった。