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第3章 夫への愛を失くした女

　その夜、恵子は腕によりをかけてご馳走を作った。

　稼ぎが十分な篤志は恵子にたくさんの時間を与えてくれた。その中で料理教室に通い身に付けた技術。
　今までは毎日の篤志との交わりで体がいつも重く、手を抜いてもそれなりの料理が作れるようになれば、と思っていた。楽に見た目のいい料理が作れればいいと、そんなふうに考えていた。

　今夜は心を込めて作った。恵子なりに調べ、性力増強に効果のありそうな食材を選び、それを丁寧に調理した。

　ひとつひとつの作業に篤志を想う。

　夫が元気になるように。
　また強い篤志が帰って来るように。

　こんなに食べる相手のことを想いながら料理を作るのは、もしかしたら結婚後はじめてかもしれない。