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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第7章 記念すべき四月
「一応、ヒョンとかにも手回して調べてもらおうと思ってる。──だけど俺は帝国もサファイアもBNも背負ってんだ、事実が分かったからって思う様に動けるかは分からないけどな。」
「……きっと大丈夫」
「え?」
「だってあの帝国だもん。相手が中国のマフィアでも何でも……帝国と他財閥と両国の警察が手組めば、怖いものなんて無いでしょ」
「他財閥、は要らねえかもな」
「どういうこと?」
「──お前が、俺のことを支えてくれてるお陰で、こんなデカイ事にも帝国一つの力で足りる位、俺は帝国をデカくすることが出来たって意味だよ。」
「……っはあ、そんな顔で見上げんじゃねえよ。」
「何でそんな事言うの。」
いつもより強く、まるで慈しむ様に彼は広いベッドの上で私を抱き締め続けている。
消えていないシャネルの香りは──やっぱりトムフォードよりもカルティエよりも、安心できる。
「こんな時に、やりたくねえだろ?」
「俺は嫌だ。」
「お前が落ち着いて、俺も落ち着いて、この一件が頭から離れた時にお前を抱きたいと思ってる。」
「……っ」
「だから、あんまり煽んじゃねえよ」
触れるだけのキスをして、寝かしつける様に背中をさすってくれる彼には──すっかり私の心の中なんてお見通しってワケだ。
『good night sweaty.』なんてガラにもない事を言ってから、私も目を瞑る。
今日は──マリリン・モンローの夢も、まるで事件が絡む様な夢も見たくない。
見たいのは、テヒョンとテテとアイと私とアボジの五人で、前みたいに食卓を囲んでいる平凡な夢だ。