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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第8章 近寄る魔の手
どこか表情の冴えない彼達にスマホの画面を見せてから、数歩だけ後ろに下がって画面をスライドさせる。
"通話中"と文字が変わったことを見届けてから、ゆっくりと携帯を耳に引っ付けた。
「ヨボセ「生きてんのか?!」
「生きてなかったら電話でないし、死者ゼロ人って報道されてたでしょ」
「はあっ……良かった。心配させんじゃねえよ」
「そんなの私に言われても……。」
よほど焦っているのだろう、普段の落ち着いた声とは反対にかなり切羽詰まっている様だった。
「もう警察からの聴取終わったのか」
「ああ、うん。……まあ聴取って言っても大体はわかるでしょ?一問一答みたいなもんよ、ただでさえ忙しい業界だから皆、そんな周りの人ばっかり見てないし注目もしてないのに」
「──確かにそうだな。とりあえず今から行くから」
「はあっ?!」
大きな声が響いた。メンバー達だけじゃなく他のスタッフさんや若い子、警察までもが私に注目する。
「ちょっ、来なくて良いわよ!」
「ああ?!何でだよ。」
「冷静になりなさいよ」
「それは昨日のお前だろ」
「……っ!……とりあえず今は絶対ダメだから。メディアも全社事務所の前に居るし、野次馬の数も半端じゃないわよ。」
「この中にFBKやKBLOCKが居て、こんな事件が起こって──そこにアンタがセンチュリー乗って現れたら、どえらい事になるの目に見えてるでしょ」
「じゃあどうしろってんだよ、いくらお前が怪我してないとは云え俺は家で待ってろってか?ああ?」
"自分の仕事してなさいよ"は言わない方が良いだろう。
コイツの、この『ああ?』の言い方はご機嫌斜めの時のものだ。