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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第8章 近寄る魔の手
「いやっ、だから──こう、もう少し落ち着いてからとかさ」
「……じゃあいつ落ち着くか、お前目処立ってんのか?!」
「バカみてえに騒いでる野次馬もテレビも何時になったら散るのかお前、それ分かってんのかよ?!」
「そりゃ向こうはお前とかアイドルの一言が欲しいんだから車に乗り込む時やら何かする時に、マイク向けてくるに決まってんだろーが、俺間違ってるか?」
「となりゃ、いつまで待ってもここ数日はアイツ達が散るはずねえんだよ」
あまりの声のボリュームに、思わず携帯を少し耳から離した。
それを見ていたヨンホとジェジュンが二人で私に目配せしてくる。……彼達はテヒョンの性格をよく知っている。
『ヌナ、大変だね』っていう言葉が、今すぐにでも聞こえてきそうだった。
「ああっ、もうわかったから。でも気を付けて来てね。アンタが来たら、ファンも来るわメディアが追いかけるわで大変なことになるんだからっ」
「分かってるわそんな事。……チッ、何でお前はいつもそんな事に巻き込まれんだよ」
「なっ──!」
「ああ!もういい。とりあえず行くから!黙って待っとけ!」
一方的に電話を切られる。
……心配してくれてるのは分かるけど、こういう事に巻き込まれるって──そりゃあ、あんたの出来の悪い兄貴のせいだろうが。って言えたらどれだけ楽なんだろう。
噂によると、彼のお兄さんもアート財閥のアホボンも既に出所しているけど相変わらず遊び回ってるみたいだし……
となると、テヒョンや私に恨みを未だ持ってこんな事を仕掛けたワケではないだろう。
そりゃ恨みはあるだろうけど、そこそこ長かった刑務所生活にまたも戻りたがってるとは思わない。