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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第8章 近寄る魔の手

彼達よりも年上だというKBLOCKでさえも、慌てふためいてたのに、彼達五人は……いつもの調子者加減が嘘の様に、至って冷静に対処していた。

咄嗟に救急車と警察を呼んだのは、アリーだったことを私は知っている。


他の人達は、きっとKBLOCKのマネージャーが呼んだんだと思ってるだろうけど──あの人が行動したのはアリーの五分後だった。


「冷静過ぎて怖かった。まるで起こることが知ってたんじゃないかって本気で思ったわ。」

「それは無い」


「そっか。──考えすぎだといいんだけど。」

「何を考えすぎてるんだよ。」

「分かんない。ただアタシが勘繰り過ぎたのかなって思っただけだよ。」

ふうっと小さくため息をつく。

死者が出てないのが何よりもの幸いだろう。──出ても可笑しくない状況だったのにな。


考えると全てが仕組まれたかの様に思えてくるから、首をブンブンっと犬の様に振ってからジュンに視線を送る。

ちょうど電話を切ったところだった。


「誰?」

「んー?親父だよ、大丈夫だったかっていう心配電話。」


「ああ、そっか。あんたらがここに居ること知ってるんだもんね。」

「そうそう。誰も怪我してないって言ったら安心しきってた。」


「……ややこしい事になったと思わねえか?イルト」

小声で、そんな事を言ったのはジェジュン。

イルトはそれに対して否定も肯定もせずに黙って警察を眺めているのみ。


「ねえっ!」

後ろから彼達の腕を引っ張ったその時──外の野次馬らしき声がワントーン高くなったのが聞こえた。
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