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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第8章 近寄る魔の手

考えるのも空しく、テレビには事務所の前にヤクザ停めされたセンチュリー。……そして、飛び降りる様にして颯爽と、私たちのいるビルの中に入って行く後ろ姿が映る。


センチュリーとバーバリーのトレンチコートと言えば──ソン・テヒョン一人しか居ない。

若手アイドルやスタッフさん達の目が私一人に注がれる中……乱暴に事務室と扉が開かれた。


「──ッ、リサ!!」

瞳孔の開いた瞳と、うっすら流れている汗は、まるでサファイアのライブを思い出させる。


コートを脱いでそこら辺の机の上に投げ捨てると大股で私の元へ駆け寄り……昨夜よりも何倍も強い力で私を抱き締めた。


「っ、痛いよテヒョン。」

「はあっ、顔見れて安心した。」


「──どんだけ心配したと思ってんだ、株主総会もローマコスメの会議も全部、お前より優先順位下なんだなって再度認識させられたわ。」

悪戯に笑いながら私の頬を撫でる彼は、心底安心しているのだろう。

誰からの目線も気持ちも、全てどうでも良い。お前しか見ていない。──そんな気持ちが手に取る様にして分かる。


「責任者は誰ですか」

急に体の向きとトーンを変えると、先程まで忙しなく資料を持ったり無線で何かを話していた堅物そうな男達にそう問いかけた。


「──私ですが……」

二歩だけ前に出てきたのは、40代くらいのとても頭の良さそうな方。

日本で言うと捜査一課とか、エリート集団に居そうな雰囲気だし……実際に韓国警察の中でエリート街道を進んでいるんだろう。

「初めまして、ソン・テヒョンです。」

「あっ、初めまして。イア・ジョンです、韓国警察カンナム署の常任取締官になります。」

よく分からない格名だな──、なんて思った私をよそに、テヒョンは驚きの言葉を紡いだ。



「韓国警察"本部"の判断により、この捜査はインターポール、そして本部の捜査一課に任される事になりました。」



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