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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第8章 近寄る魔の手
アート財閥にテヒョンが喧嘩を売った時、彼は裏金とかじゃなく、もしバレても逃げ道を作れる様に強かに各百貨店とアートとの契約を切らせた。
そして──自分の血が経営する味剣フードに持っていかせたのだ。
三時間前に聞いたテヒョンの最後の言葉は──その時とは真逆だった。
思いっきり裏金を渡して捜査させる事になった。と言っていたんだから。
正義感が強く、そういう事をしない筈のテヒョンとアボジが二人揃って、今回の行動をした。
……つまり、彼達はそれだけ中国人兄弟の遣り方に腹を立てているし、本気で潰しにかかろうとしているっていう事だろう。
「全員揃ってんのか」
「うん。」
アリー所有のベンツのワゴンを運転するのはリーダーのイルト。
あれから又も同じ様な質問を一人づつされて、結局時間がかかりそうだって事でテヒョンは先に会社に戻った。
『これ、よろしく頼むわ』
という言葉にメンバー全員が頭を下げて、無理矢理アリーにワゴンを取りに戻させたんだから彼の一言は相当な威力を持っている。
車内に流れるサファイアの新曲を止めて、後ろの子達に目をやった。
「何、どうしたの」
「──ねえ、警察から何言われた?」
「別に普通の事だよ。誰がスーツケースおいていったか見たか?とか、それ以前からウロついてる不審者見なかったか、とか」
「まず芸能事務所の前なんて不審者だらけだけどな。純粋なファンも居ればストーカー候補みたいなヤツもいるんだし」
「そんなヌナは何聞かれたの?」
「私は──」
別室で目の前に現れたのは日本から来た警視庁本部・組織犯罪対策第一課に属する超エリートと思わしき43歳の男性だった。
組織犯罪対策第一課は国際犯罪組織の犯行を暴いたりする部署と言われている。
つまり──例の兄弟担当と言った方が良いのだろう。
「私は、なに?」