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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第8章 近寄る魔の手


『ハンソン兄弟について何か情報は知っていますか』

『今回の爆弾を置いた犯人、あの兄弟の仲間だと我々は予想しています』

『後ほどテヒョンさんにも説明いたしますが……』


『彼達が来日した時に、使用したと思われる注射器に同じ指紋が付着していました。勿論、その中の誰の諮問かはわかりませんが──』

『その指紋がスーツケースのチャックの部分に付着していたんです』


「……リサ?」

信号が赤になったんだろう、ハンドルから手を離したイルトが私の頬を触り、自分の方へ顔を向けさせる。


「何か有ったのか」

静まり返る車内が、いつものFBKが乗る車内とは全くの別物みたいで気持ち悪い。

普段の彼達なら、捜査長くて疲れただの色々と文句を言いながら最後は誰も死んでいない事に喜んで、そしてそのまま今日は何食う、どこで飲むと話をするだろうに……。


「ねえ、アンタら何か知ってんじゃないの」

グッとイルトを見つめる私の瞳、そしてそれに負けじと逸らす事なく見つめ返してくるFBKのリーダー。


「何を、だ」


「──今回の、この一連よ。何でそんなに冷静で居れるわけ」

「デビュー前に事務所の前に爆発物が置かれてたのよ。」

「何で……私が様子を見に行こうとした時、アンタは『危ない』とただ一言、そう言ったの?」


「私は、あれをはじめ爆発だとは思わなかった。時期的にも時間的にも有り得ないけど花火の誤射とか、そういうモンじゃないのかなって思った」

「普通ならあの状況で出る言葉は『危ない』じゃない筈よ。」

「むしろ、アンタらみたいな好奇心旺盛で怖い者知らずの若い子達が先陣を切ってKBLOCKみたいに窓の外を覗くはずなの。──そして騒ぎたてる」


「でも、あの場で冷静に私を窓に近付けない様にしたのも、救急車と警察の手配をしたのも全員がFBKのメンバーだったの」

「これで──何も知らないって言う方が"ヌナ"の事、ナメてんじゃないの」


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