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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第9章 見た事のない世界
「……まあ、デビュー前だからそりゃ飲み会も有ればお前が参加しねえといけないのは分かるけどよ」
「あいつ達だけじゃなく、芸能関係でも凄腕の新マネが帝国会長の嫁だって暗黙の了解だろ。なのに、何でこんな時間からの飲み会に誘うんだよ」
もっと機嫌の悪い顔をする彼。
ご飯は食べてきたからお腹なんて空いていないハズなのに、テーブルの上にあるキットカットを珍しくかじっている。
甘いものを食べたいなんて……普段からブラックコーヒーとか苦いものを好む旦那さんは、やっぱり疲れているに違いない。
それが仕事だけなのか、あの事件も絡んでるのか……どっちかは分からなかった。
「そっ、それは分からないわよ。でも、いくら私の名字が『ソン』でもこの業界では新人だし、デビュー前の可愛い子達を見るマネージャーだからね。そこは融通効かなかったんじゃないの?」
「……はあ。何の為に俺がお前を事務所にも、その他の関係者にも紹介してるのか、これじゃ分かんねえな。」
「まあいいわ。韓国芸能界なんて接待の塊だし、まず第一にお前には誰も手出さない……ってか出さねえだろ。普通のやつ達じゃ。」
「そんな事あるはずないじゃん、メンバーもいるのに」
「だから行って来て良いって言ってんだろ。──その代わり、絶対に夜中の3時までには帰ってこいよ。」
「今からソヨンさんに頼んで、運転手手配してもらえ。帰りは、そのまま自分で携帯で呼べば良いから」
「運転手さん使って良いの?」
「ああ、俺はもう寝るから今日は使わない。好きにしろ。ったく、旦那が疲れてるっつーのにお前は飲みに行くなんて、俺もすっかり丸くなったもんだわ。」
憎そい事を言ってる彼だけど……確かに丸くなったのかな?
前までなら、こんな時間から家を出るなんて言ったらそらはそれは誰と行くのか・どこに行くのか・そいつと電話させろ。なんて面倒臭いことになってたのに。
少し大人になったテヒョンを可愛く思いながら、しっかりとお礼を言って、今度は入れ違いに私がリビングを出た。
嘘ついてごめんね、と心の中で一度だけ謝罪の言葉を彼に送りながら。