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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第9章 見た事のない世界
カンナムオンニ顔といわれる、この土地カンナムには同じ様な顔をした女性がたくさんいる。テヒョンが目をつけた『この韓国はみんなミーハーなんだ』という国民性。
それがよく整形手術にも現れているのだろう。
ましてや、この時間のこの土地となればみんなエルメスやらシャネルやらを身に着けて歩いているのはほぼ当然、とでも言える。
ジャケットのボタンを外してからKBLOCKの子たちに教えてもらったビルを見つけると、そそくさと階段を下りる私。
久しぶりに聞くEDMは、ここが地下クラブだと私に教えてくれた。
幸いにもそんなに混み合っていなかった為、入場料を払ってまもなくガタイの良いお兄さんにニヤニヤとした目で案内される。
「……まさか、あの帝国の大夫人様がVERMINにいらっしゃるなんて」
私にしか聞こえない声。
わざとらしいほどに腰に回された手はボディーガードの役割なんて更々果たす気もないのだろう。何も言わずに居ると、不思議そうに振り返られた。
「フロアで良いんですか、"ソン"さん」
「……VIPは空いてるの?」
こんなわずか数秒、数分で顔を見て”ソン・リサ”だとバレてしまったところを見ると、いくらハンソン兄弟に会いたいからってフロアで能天気に両腕上げてる場合じゃないな、と思ったのだ。
「確認します」
素早くマイクとイヤホンを片手で押さえ、早い韓国語で話しかけてから三度頷いた目の前の男。
「……」
昔はクラブって嫌いじゃなかった。
それこそリョウと一緒に踊りにいったこともあるし、テヒョンも後輩やメンバーでどこかに遊びにいくとなったら最終的にはいつもクラブに行ってる。
その場に毎回と言ってよいほど、同席していたのだから嫌でもこういう場面には慣れてるはずだ。
──でも、ここVERMINは何かが違う。
その『何か』こそが、私が求めていたドラッグ・女・セックス、この三つの単語を繋ぎ合わせた先のイコールにある『ハンソン兄弟』だったら、どれほど良いんだろう。