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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第9章 見た事のない世界
ド派手な龍のイラストが入っているシャツはグッチの今シーズンのモノで確か一着10万円超えだっただろう。デザイナーの変わった『GUCCI』の全実力なんて評価されているモノで、世界規模ですぐに売り切れになったはずだ。
今では、オークション等で約8倍の値段で販売されている。
テヒョンでさえもありとあらゆる手を回して買った品物だから──よく覚えているんだ、この柄もこのシーズンのモノも。
そんな代物をキチっと着こなした背の高い男は、真っ黒の髪を気ダルそうに触りながら男の後ろに居る私を捉えて離さない。
見つめると出れなくなりそうなトグロ、そんなモノに吸い込まれそうな瞳だ。
何て言うんだろう──奥が深すぎるというか、ああそうだ。ドラッグを使ってのセックスに例えると話は早いだろう。
一度、体感すると抜けれない・逃げ出せない。
そんな人物かもしれないな、と一瞬にして私の五感に働きかける髪同様の真っ黒の瞳。
テヒョンやイルトに負けず劣らず、顔の造形は綺麗で女装がよく似合いそうだ。
「ユンサさん、って驚く前にイイ女捕まえてんじゃねえか」
「この俺に紹介無しで勤務中にこの方を落とそうなんて、か?」
「いやっ、そのVIPルームを「アイツは?」
「アイツとは、イヴァンさんでしょうか」
「そう。まだルームで遊んでんのか」
「はっはい、先ほど隣のC室の鍵をもって「はあ……。入って良いから呼び出して来い」
「えっと、いいんでしょうか」
「今日はどっからか知れねえけど、水漏れしたみてえだわ」
「……なっ、本当ですか!?」
「まあ、仕方ないけどな。アイツが来るまでの間、俺はそのお姫様の隣に座って同じのを一杯飲みたいんだけど」
「畏まりました!おい、マティーニの水割りをもうひとつ用意しろ。」
「はい。」
「では、今すぐイヴァンさんを呼んできます!」
まるで軍隊か、と突っ込みたくなる様な華麗な上下関係だ。
そそくさと『C室』と思われる部屋に向かっていったイヤらしいボディーガードとは入れ替わりで、気障な男が私の左手の甲にキスをした。
「はじめまして、女王陛下」
「じょ……おうへいか?」
「ははっ、帝国財閥の会長夫人ですよ。女王陛下と僕が呼んでも可笑しくはないでしょう」
「……」