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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第10章 子育てはエゴイズム
運転手さんに、お迎えは要らないと半強制的に連絡をさせられた私が乗り込んだのは真っ黒のベンツ。
運転席に座っている男性は、いかにも強面だ。
後部座席には私とイルト。イルトのお父さんは、これも又ベンツのワゴン車で帰るらしい。
窓の光方が家と同じ所を見ると、ここの家が持っている車は全車防弾ガラスを使用しているんだろう。
KBLOCKから聞いていた神宮会の話が本当なら、国内に敵はほぼ居なくてもハンソン兄弟の様に、国外の敵や資産を狙う邪な考えをもった輩に狙われる可能性が高い──のだと思う。
私なら……
他の財閥が帝国に決して喧嘩を売らないのと同様、神宮会に喧嘩を売ろうなんて思わないけど。
極道の世界っていうのは、成り上がりの世界だ。そういうイケイケな考えを持つ男がおおいからこそ、成り立っているのかもしれない。
「メンバーが全員俺の家で待ってる。」
「──みんな、幼馴染みって言ってたよね。親の関係で仲良くなった、って。」
「そっから先はヌナがアイツら本人の口から聞くことだろ。俺は身元を明かしたんだ、反社会的勢力のナンバーワンである神宮会のトップの一人息子だってな。」
「……。」
「財閥と一緒だよ、俺も親父も生まれた時から神宮会の輪の中に居た。」
窓をほんの少しだけ開けると、チェックのシャツの胸ポケットからタバコを取り出したイルト。
その瞳はどこか明後日を向いてそうだ。
「ただ、財閥とひとつ違うとしたら表立って育ちを言えないことだと思う。」
「ヌナの家と同じアメックスのセンチュリオンカードを持てても、手のつけてるクラブや飲み屋で散々暴れられても、それでも俺は所詮マフィアの子供だ。」
「芸能界に入ってトップアイドルになりたい──なんて夢、ある意味……非現実的過ぎるよな、とは思う。」
「……。」
ああ、これはきっと独り言なんだろう。
わざと返事をしないまま、前だけを向いている私。
「でも、お前は俺達を必死にサファイアさんの後釜として育てようとしてくれてた。」
「こんな"アホ坊五人"に愛想つかさず、本気で向き合って本気で愛してくれてた。」
「だから──、俺は頼みこんだんだ。親父の組織が手かけてる所に全部連絡して、ヌナの写真送って、もしかしたら来るかもしれない。その場合は即座に連絡してくれ、ってな。」