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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第10章 子育てはエゴイズム
ベンツが入っていくのは、財閥ドラマに出てきても可笑しくない作りのお家だ。広い門に沢山の監視カメラ。敷地はどれくらいなんだろう……。
新しく日本風に建て直したウチとさほど広さは変わらないかもしれない。これぞマフィアの本領とでも言ってみようか。
イルトは、運転手さんに対して礼一つ言わず私が車内から足を踏み出すのを待っている。
「これ、イルトの家?」
「ああ。まあ俺達は宿舎だから家って言っても帰って来る事なんか知れてるけど」
ああ、きっとこの人達って何人もの男を殴ったり殺したりしてるんだろうな、と容易く想像出来る見た目の男の人達に見送られながら、私とイルトは二人で家の玄関に入る。
「どう、ヒョンの家と違う?」
「まあ、そりゃ違うけど同じ位豪華ね。」
「財閥の方が質素なんじゃないの。俺達マフィアは所詮成金だから、こういうのを好むけど」
ベルサーチの靴を脱ぎながら器用に片手で指を刺したのはラッセンの絵の前に置かれているガラス細工っぽいイルカの置物2つ。
所々に純金と思わしきものが交ぜられてる。きっとそこそこの値段がするに違いない。
これが欧米のマフィアならトラやライオンで、日本のヤクザなら招き猫だったのかな?
している事や『マフィア』という職種には似つかないラッセンを、どこか可愛く思いながらリビングへとずんずん進んで歩くイルトの後ろを付いて行く。
何か話している何人もの男性の声は──ああ、きっと『FBK』だろう。