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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第10章 子育てはエゴイズム
「だろ、だから神宮会と、そのナンバーツーである新家はその話を蹴った。」
「あの時のお前のアボジの言葉覚えてるか?」
「さあ、知らねえ」
「俺は自分のアボジから聞いたわ。『ドブネズミがイキナリ料亭の残飯を食ったからってミッキーマウスには成れない』って言ったんだぞ」
「へえ、だからアボジ達はアイツら兄弟の事を『溝鼠』なんて呼んでるワケか」
「……」
一瞬だけ脳裏に浮かぶテヒョンとテヒョンのお兄さん。
イルトのお父さんの言葉は良く物事を捉えた例え文句だと思う。
"父親が同じでも婚外子は所詮、婚外子だ"──あの当時、闇を抱えていたテヒョンが何回か私にそんな事を言ったなあ。なんて思い出したのだ。
マフィアは確かに反社会的組織とされてる。
でもそんなマフィアにも己のプライドや意地が有るワケだ。それが、ハンソン兄弟の話を蹴った所に繋がるんだろう。
「初めはロシアだったよな、アリー」
「ん?ああ、子供の誘拐か?」
「っていうより、ハンソン兄弟の嫌がらせ」
「っあー、そうだな。」
「その一年後くらいか?だから二年前、か。ロシアで人身売買で食ってた国内二番のマフィアグループのナンバー5までの五人の幹部が一気に殺されたんだよ、俺の親父がすげえ焦ってた事、今でも覚えてる」
「なんで焦るの?」
「俺達が殺した、なんて警察に睨まれたら面倒くせえだろ。まあ、ウラジーミルファミリーって言ったら日本の山口組くらい、他の組織と規模が違うからそんなヤツ達が国内二番手のマフィアを殺す筈もないだろって何も成らなかったんだけど」