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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第11章 重要参考人の貴婦人様
勢いよくお店のドアを開けて、公道に飛び出すと日産一の高級車がこれでもかと言う位に大きなクラクションを鳴らす。
反射的に端に寄りペコリと頭を下げた私の顔を見て、車内に居たカップルが驚いた顔をしたのは言う間でもない。
きっとそれは──痛いほどに言われた『帝国夫人』だからだろう。
──私が裏世界のトップの娘だったらどうなってた?きっと彼らは何も驚いた様な顔はしない。むしろ外に出て、危ないだろ!と文句を叫んできていたと思う。
「なんなの……っ」
「あんただって──」
「アンタだって婚外子じゃないの!」
「誰だって──」
「誰だって、成りたくて帝国夫人になったんじゃないのよ!!」
「好きな相手が──」
「一緒になりたかった相手が、帝国のトップだったから私も帝国夫人になっただけやんか!」
韓国の夏は蒸し暑い。
だけど、しゃがみ込んで、この土地に不釣り合いな日本語でそう叫びながらわんわんと泣き喚く私はもっと蒸し暑いと思われているに違いない。