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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第11章 重要参考人の貴婦人様
「……あ、あんた。」
「一緒に飲みませんか?前回は、不本意の水漏れで私達は捌けるしか有りませんでしたので。」
あの時は分からなかったけど、今なら分かる。
水漏れとは『情報が漏れた』の隠語なんだろう。
現に、彼がそう言ってから数分後、神宮会がハンソン兄弟を探しにきたんだから。
「ハンソン・ブラザー。」
「──やはり、知りましたよね。」
いいですか?と聞く様に、私の目の前のソファーを指差す彼。不思議と何の迷いもなく頷いてしまった。
「色々と聞いた。」
クウから貰ったんだろうか、ミルクティーのピッチャーとあの日と同じドンペリを器用にグラスに次ぎながら、静かに私の話を聞いている彼。
「神宮会や山口組との揉め事も、その発端も。──貴方達がBNの前に爆発物を置いたのよね。」
「ははっ、あれに関しては部下が悪かったですね。しっかりとスーツケースに指紋を残していました。」
「──でも、その指紋は既に警察当局にデータ保存されていたのよ。あながち、その方は『捨て駒』だったんでしょ?」
乾杯をしてから、ぐいっと一気にシャンパンを飲み干したユンサは、静かに二度首を縦に振る。
「この業界では、必ず滅びてはいけないトップ層と、どうなっても良い下層の人間が居るものです。」
「神宮会ならば長男のイルト、新家ならジェジュン。そういう風にね。」
「あんたの──」
「あんたの考えてることが分からない。」
「……そうですか?僕はただ、貴方を気に入り貴方と飲みたいから、ご飯を中断してここに来ただけです。」
どうして私がここにきたことを知ってるの?いや、まあそれはクウからの情報か。
でも、なぜクウはハンソン兄弟についているんだろう。──ここは、神宮会の島内のハズなのに。
「それもわからない。もしかしたら、また水漏れするかもしれないのに……こうやって悠々と此処に来れることが信じられない。」