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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第11章 重要参考人の貴婦人様
「貴方もそうでしょ。その努力の形は"最低"だけど、自分が生きるために描いていた未来を掴むために、がむしゃらに走り続けたんでしょ」
「だから、今そうやって仕立の良いスーツを着て、あんな人気のグッチのシャツも手に入り簡単に着こなしてる」
誰にも認められたことがなかったのかな?と思わせるほどの、子供の様な視線。
そりゃそうか。
彼達が出歩く場所には金か薬のドチラかしか見ていない様な女ばかり。もしかしたら、こうやってマトモに女性と話した事なんて片手程度なのかもしれない。
同じ年齢位の様に思える。
でも立場は真逆。
もし通ずる事があるとするなら──ただただ必死に夢を掴むべく、生き続けたってことだけなんだろう。そう、必死に生き続けた。という認めて貰えそうで、案外誰にも褒められない既成事実。
「だけどこれだけは言わせて」
「何ですか」
低いトーンの声、だけど決して怒ってはなさそうだ。
「……貴方はもうそれなりに資産も有るんでしょう。裏の世界でだって『ハンソン兄弟』という名前はしっかり通ってる」
「それなら──」
「それならっ!反人道的な子供を狙うとか、臓器を売るとか、もうそんなの辞めても良いんじゃない」
「私がこんな事を勧めるのは変だと思う」
「だけどさ、例えば投資詐欺であったり何だって出来るでしょ。勿論詐欺とかそんなんじゃなくても、マトモに仮想通貨や土地に金払ってみるとか」
「もう──止めなよ。アンタらにも子ども時代が有った筈じゃん」
ああ、なんでまた。
そう思って右手のひらで自分の頬を触った時、今度はノックも無しにVIPルームの扉が開かれた。
「あ、やっぱり兄貴ココか~」
「イヴァン」
バカそうな弟が、ド派手な中国人らしい服装でズカズカと部屋へ入ってくる。
ユンサはイヤそうな顔をしながらも隣を開けていた。
「何だ、いきなり」
「いやっ、ジュウクに聞いてさ。兄貴が『待ち人が来た』なんてクドい事言いながら急いでバーミン行ったとか言ってたから」