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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第11章 重要参考人の貴婦人様
──気障な兄貴が出ていくと同時に、私の身に振りそそぐのは沢山の好奇心にあふれた厭らしい視線。
幸いにも、テヒョンとの付き合いが報道された直後は、町に出ても何をしてもこんな感じだった。大学なんてもっての外。
だから……こういう目で見られるのは嫌いだけど慣れてはいる。
「なあ」
「何?」
ニヤリとしながら、話しかけられた。
コイツはユンサとは全然違う。本気で敵に回せばあの人は、普段冷静であんな紳士に見える態度だからこそ怖いはずだ。
だけど、コイツは普段からアホそう。
そこが私の背筋に鳥肌を立たせる一つの原因なんだろう。
「兄貴に口説かれたの?ソン・テヒョンのお嫁様っ」
「口説かれてるワケないでしょ。敵対するべき立場なの、貴方たちが一番分かってるんじゃないの」
ユンサは損得で人を殺すだろう。
コイツは──イヴァンは、ゲーム感覚で人を殺すと思う。
ああそうだ。この顔の整った兄弟の決定的な違いは『ココ』だ。
「へえ……じゃあ親孝行ならぬ兄弟孝行してやらねえとな」
「はあ?」
「おい、」
綺麗な笑顔と反対して男らしい一言。
それを聞いた、取り巻きの二人もニヤニヤしながら私の元へやってくる
「何よ……」
「へえ、帝国夫人でもビビる事ってあるんだ」
「あんたっ──何する気!?」
壁に有るBGMの音量を変えるであろう機械を触った一人の男。そしてそれと同時に耳に入るロシアグループの『ミミミ』なんて曲。
「だから言っただろ。兄貴孝行だよ」
グッチのバッグから取り出したモノを見るなり立ち上がる私の両腕をガタイの良い男二人に掴まれる。ああ、逃げっこできない。
そう思った矢先だった。
私の腕を強引に掴んだ男に、注射器で液体を流しこまれたのは。