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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第11章 重要参考人の貴婦人様
ドクッと血管が縮小するのが分かる。
そしてその数秒後に、視界が開くと同時に──頭の中で大きくなる"無"という感情。
「これっ、何っ」
「……一切遊んでなかったってコトか。俺らレベルになれば、流し込まれただけでそれがドコ産のナニなのかは直ぐに分かるけどなあ」
「……っ」
苦しさと、あともう少しで開けそうな快感の入口を彷徨っている感覚。
「それはな『コカイン』っていうの。さすがの貴婦人でも名前くらいは聞いた事あるだろ?」
睨み返した視線が面白かったのかな。
何かを合図したイヴァンと、それを実行した右腕を掴む男。
「っ、ゴホッ!もうっ!」
グラスが割れてしまうんじゃないか、と思う位に力強く唇に当てられたら嫌でもドンペリが私の体内へ流れ込む。
「コカインはなあ、酒と飲むと最高になるんだよ」
「やめてよっ!あんたらっ」
「だけどなあ!もっと最高になるのは」
「セックスした時……なんだよなあ」
顎を上にあげると同じくして、視界がグラリと揺れる。
腕を離されると、もう自分の身体では体重を支え切れないんだろう。ドサリ、と鈍い音を立てながら私……ソン・リサは人生初の覚せい剤のせいで、倒れ込む様に真っ白のソファーに沈んだ。
「イヴァンさん、量多かったんじゃねえっすか」
ネイティヴの韓国語だ。
「大丈夫だよ。いくら初心者って言っても普段から酒飲んでタバコ吸ってってしてる『貴婦人様』なんだから、これくらいで死ぬことはねえぜ?」
「ユンサさんには…「──リサさん?」
この取り巻きよりも、もう一段階落ち着いた声。
「お前らッ!何した?」
「兄貴が、中々オトせなさそうだったからさあ~ちょっと手伝ってやろうと思って」