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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第11章 重要参考人の貴婦人様
「っ、兄貴ッ!!」
ドンッと響く鈍い音。
殴られそうになった事は有ったけど、殴った事なんてない。こんなシャンパンの瓶で人の事を──なんて、ね。
もし、アート財閥の長男が私の事を殴っていたら、この様に自身の手にもかなりの痛みが走ったのだろうか。
「何しやがるん「アンタら、いい加減にしなさいよ!」
「リサさん、落ち着い「落ち着かない!落ち着けない!」
先ほども言ったはずだ、ラリった私は"無敵"だと。
「例えばさ、日本人に殺されかけたとか韓国人に殺されかけたとか、そんな次元の話しならまだ!百歩譲って納得出来たわ」
「でもね、話しを聞いてたら蔑まれたのは韓国人と中国人からなんでしょ?」
「日本なんて無関係そのものじゃない。」
「まるで『世直し』みたいな口ぶりでモノ言ってるけどさ。順番が違うでしょ、それなら中国と韓国に目を付ければ良い」
「なんでっ──なんでそこに日本人の子供を交入れるの!」
「アンタらのしてる事って……小学生と同じよ。」
「先生が宿題したのに褒めてくれないし、むしろ『間違ってるじゃないの!』と怒ってきて腹が立った。だから先生の鍵とチョークを隠した。最後は──先生の悲しむ顔を見ながら殴ってやろう、そんなつもりなんでしょ」
「………。」
「ばっかじゃないの!アホらしい!いい加減にしな「──いい加減にするのはテメエの方だろ!帝国夫人だからって俺が手出せねえとでも思ってんのか!」
再度振りかざした手をイヴァンに強く掴まれて、強引に体ごと彼の元へ引き寄せられる。
ユンサは、思いの外直撃したドンペリの瓶が相当痛かったのだろう。
血を流しながら頭を抱え、動こうにも動け無さそうだ。
「ふざけんじゃねえよ、兄貴が──兄貴がっ!」
「イヴァン!!やめろ、リサさんに手なんて出すんじゃない!」
差し込まれた注射針の痛みで、眉間に皺を寄せた時──。
あの時と同じ様に外資系会社の香りが私の鼻に香った。
一つ違うのは、この香水がシャネルのモノじゃない、ということだろう。