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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第11章 重要参考人の貴婦人様
「イヴァンさん!やばいです!」
背の低い男が必死の形相で、イヴァンにそう叫ぶと全てを察した彼は、注射針を引き抜き自らのポケットに入れてから、素早く自分の兄を担ぎ上げる。
若干フラフラするのは、やっぱり入れられたんだ──、薬を。
「おめえ、コラッ!」
奥から聞き覚えのある声がするけど、何処かの国の要人の様に、仲間に囲まれて裏口から逃げようとしている国際指名手配犯の男兄弟。
激しく耳に響くのは、乾いた音。
韓国では実弾射撃とやらが人気だった。私もテヒョンと済州島で何回かしたことがある。
その時の音だな……。なんてボンヤリしていたのも束の間、沢山の銃音と足音が駆け回る中、これは……ああ、そうだ。ヴィトンの香りだ。
優しい香りの付く腕が、倒れ込んでいる私を優しく抱き抱えた。
「香水変えたんだ。」
「……っ、なにされた?」
テヒョンやコイツよりは大きくないけど、一応二重の私の瞳には、今にも泣き出しそうな顔をしたイルトが居た。
シャネルの五番だったのにな。
「なにもされてない。」
「──ッ、怪我はっ」
「ないよ。飲み過ぎて頭がクラクラするだけだから。」
無理して立ち上がろうとするのを、ぎゅっと力を込めて阻止される。
震えてるっつーの。って、牧野つくしみたいな事言えたらな、もっと強くなれるんだろうけど。
どうやら、いくら修羅場をくくってる何て言ってもレベルが違うかったみたいだ。