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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第11章 重要参考人の貴婦人様
まるで素人と変わらない女に銃口を向けられるのと、人をゲーム感覚で殺す様な『弟』に殺されかけるのとはワケが違う。
いや、殺されかけてはないのかな。
でもマリファナさえも吸ったことのない私に、これだけの麻薬を入れるんだから殺す気だったのかもしれない。
思いの外、強くなれてなかった私は、ゆっくりとイルトの広く逞しい背中に腕を回した。
彼は──。
彼は──私が泣いているのに気付いたんだろう。もうそれ以上は何も言わなかった、ただただ優しく背中をさすってくれていた。
まるで荒野に咲く綺麗な二輪の華の様な状態かもしれない。
こんな荒れ地に、私たち二人は目に見えない絆や信頼で、こうやって抱き締めあっているのだから。
「はぁ……」
「何ため息ついてんだよ。」
EDMは鳴り止んでいた。きっとイルトは、神宮会を引き連れて来たはずだけど皆、気を使ってるのか、この部屋には入ってこない。
ただ、もう聞こえない銃の音が表すのは少しだけ開かれたドアから見える地面に転がっている遺体だ。
目に見えるだけで二人。
ガタイの良い男と……あんまりハンソン兄弟とは話していなかった様に思う真っ黒の髪をした若い子。
二人とも、まだ25歳とかそこら辺だろう。どういう理由でこの世界に足を踏み入れたのかは知らないが、あまりにも若い子の命にしては軽すぎる。
神宮会の面子と思われる人達は、忙しく未だ動き回っている様だったけど、どうやら無事そうで……そこは良かったかな。
私の目線の先に気付いたイルトは、やっと腕を離し、ゆっくりと立ち上がると細く長い足で、少し雑にドアを閉める。
「要らんモン、見んじゃねえ」
「……見えたのよ。」