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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第11章 重要参考人の貴婦人様
先頭を歩くイルトは器用に片手でお父さんが手に持っていた拳銃を奪いあげると銃口を──
何度か喋ったアイツ……そう、クウに向けた。
異様な雰囲気を察知して、急に静まり返る私達。
わざと四人と自分の父親から距離を取った彼は、少しずつチェ・クゥに近付いていく。
もちろん、私を抱き抱えたまま。
「おめえらしいな」
「ちっ、違います!俺じゃないです」
「──勘違いなんです。俺は……俺はただあの人達がハンソン兄弟だなんて思わなかっただけなんです!!」
「はっ、すげえ根性だな。今さら何言ってんだ?」
「イルト!辞めろっ」
「ジェジュン。蛙の子は蛙なんだな、そう思わねえか?」
「そっ、そんな──。てめえ自分の立場分かって「──ああ、うっせえ!黙れや!」
デビュー一ヶ月前から一緒に居た。側で何年も見てきたパン会長とかと比べると彼達をみていた歴は浅い。
でもそんなの関係ないんだと思う。
本当に愛していて、ちゃんと個人を見てあげていたら──今、イルトは『完全に狂っている』と誰でも分かることだろう。
だから普段は声を荒げることのない、落ち着いたジェジュンが必死に止めている。
近付いて来ないのは──今のコイツなら、仲間にさえも銃口を向けかねないから。
普段頭の良いイルトだからこそ、こういう風になった時は怖いのかもしれない。