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シャネルを着た悪魔 Ⅱ
第11章 重要参考人の貴婦人様


──とても寒い。季節は春過ぎ、もうすぐ夏に差し掛かろうとする時期なのに。

韓国はいつもそうだ。冬は寒く夏は蒸し暑い。日本と季節は変わらないと云えど、やっぱり少しの違いは有る。民族性も勿論のこと、季節も。

じわりと汗の滲む左手にチカラを入れた時、いつもと違う事に気付き目を開いた。


「リサっ!」

飛び込むのは、必死に私の手を握っているテヒョン。こういうシーンを刻むのは何度目になるだろう。毒薬事件、刺された事件、最後の最後になると思っていた『銃撃事件』

でもどうやら、テヒョンにこんな顔をさせるのも私の手をこうやって神に祈る様にしてキツク握りしめるのも、あれが最後じゃなかったみたい。

持ち前の適応能力で即座に状況を理解すると、何一つ痛まない体を不思議に思いながら上半身を上げた。旦那さんの優しい腕が私の背中をさする。


「……博愛病院っていう所にイルト達が連れて行ってくれた。」

「安物のコカインを、あそこまで入れたらドラッグ中毒者でも即死や脳の麻痺が起こっても可笑しくなかったらしい。」


思い出すのはイヴァンの言葉だった。

『メキシコ産でここまで飛べるなら、考えてた売値の五倍でもいけるかもな』だったっけ……曖昧だけど、きっと彼も私に注入したモノが上モノじゃない事を分かってたのだろう。

ここまで大ごとになるとは──想像していなかったかもしれないけど。

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